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DTMでのサンプリングとリミックスに、ステム分離を使う

約5分

DTMで曲を作ったり、リミックスをしたりしていると、「あの曲のドラムだけ抜き出して、自分のトラックの土台にしたいな」とか、「このボーカルフレーズを使って、新しいアレンジを考えてみようかな」なんていう、ちょっとしたアイデアが頭をよぎること、ありますよね。

昔は、そういうパートごとの音源、いわゆる「パラデータ」が公式から提供されているような場合でないと、なかなか難しかった作業でした。ところが、最近はAIの力で「ステム分離」といって、曲をいくつかのパートに分けられる技術が出てきたんです。これが登場して以来、DTMの自由度がぐんと増しました。

今回は、このステム分離という技術を、サンプリングやリミックスの制作にどう活かせるのか、その基本的な考え方と、実際にDTMでどうやって使うのか、といった実践的なアイデアを、できるだけ分かりやすくお伝えしていきますね。

活用アイデア3つ

ステム分離をDTMで活用する、具体的なアイデアが3つあります。

1. ボーカルだけを抜き出してリミックスを作る

まず一つ目は、ボーカルだけを抜き出してリミックスを作る方法です。好きな曲のボーカルトラックだけを抽出して、普段使っているDAWソフト、例えばLogicやAbleton、FL Studio、Cubaseなんかに読み込ませるんです。そして、コード進行やリズムトラックは自分でイチから作り直す。そうすると、原曲の雰囲気とはガラッと変わった、例えばクラブでかかるようなダンスミュージック系のリミックスとか、もっと落ち着いたローファイな感じのアレンジなんかを、比較的簡単に作れてしまうんですね。

DAWのアレンジ画面抽出したボーカル自作ドラム自作ベース自作コード
借りてくるのは上の1本だけ。下は全部、自分で組み直したトラック。

2. リズム隊をサンプリングして、オリジナル素材にする

二つ目は、ドラムやベースといったリズム隊をサンプリングして、オリジナルの素材を作るアプローチです。ドラムトラックだけをきれいに抽出できれば、それを細かく切り刻んで、独特のアタック感や、その曲ならではの空気感を持ったオリジナルのドラムキットとして使うことができます。

ドラムだけを取り出して、切る抽出したドラムループ切ったものが、そのままパッドの素材になる
1小節を切り刻めば、その曲の空気ごと自分のキットになる。

ベースラインだけを抜き出して、そのフレーズや音色をじっくり研究したり、そこからインスピレーションを得て、全く新しいベースラインを自分で作ってみる、なんていう使い方も、すごく効果的だと思います。

3. メロディやコード進行を分析する

そして三つ目は、曲に使われているメロディやコード進行の分析です。ボーカルやドラムといった主要なパート以外に、ピアノやシンセ、ギターといった「上モノ」と呼ばれるパートが、「その他」というカテゴリーで分離されて出てくることがあります。

これらを注意深く聴いてみると、ボーカルやリズムに隠れてあまり目立たなかったような、細かいオブリガード(他のパートとの掛け合い)や、独特のボイシング(コードの構成音の積み方)なんかが聴き取れることがあります。こうしたプロのトラックメイカーがどういうアレンジをしているのかを、耳で解剖して分析するのに、とても役立つんですね。

自分のトラックに馴染ませる、3つのコツ

さて、そうやって分離したトラックをDAWで使うとき、単体で聴くと、どうしてもAIで分離した特有の「サーッ」としたノイズが混じっていたり、高音域が少し揺らいで見えたりすることがあるんです。これを、自分のトラックに自然に馴染ませるための、ちょっとしたコツを3つ紹介します。

コツ1: 空間系エフェクトでぼかす

まず一つ目は、リバーブやディレイといった空間系のエフェクトをうまく使うことです。抽出したボーカルやフレーズに、薄くリバーブやディレイをかけてあげると、分離したときにどうしても残ってしまう細かいノイズや、語尾の不自然な切れ目なんかが、うまくぼやけて目立たなくなります。まるで、そのパートが最初から空間の中に自然に響いているかのように聴かせることができるんですね。

切れ目をぼかすそのままリバーブあり薄くかけるだけで十分。かけすぎると前に出てこなくなる
不自然に切れる語尾も、残響が続けば「そういう鳴り方」に聞こえてくる。

コツ2: EQで不要な帯域を削る

二つ目のコツは、EQ、つまりイコライザーで不要な帯域をカットすることです。例えば、ボーカルトラックを抜き出した場合、低音域をカットする「ローカット」を適用して、元の伴奏で使われていたバスドラムの響きが少し残ってしまっているような場合、その部分を削ってあげることで、ミックス全体がすっきりします。それぞれのパートに最適な周波数帯域を調整してあげるだけで、全体のまとまりが良くなるんです。

コツ3: 自分のトラックをしっかり鳴らす

三つ目は、これは結構大事なんですが、自分が作ったトラックの音量をしっかり大きめに出すということです。サンプリングした素材をあまりにも前面に出しすぎず、自分がゼロから打ち込んだドラムやベースといったパートの音量をしっかりと確保してあげることで、分離ノイズが相対的に気にならなくなります。

主役はどちらかサンプル自作ドラム自作ベース自分のトラックが主役、サンプルは彩り
素材を下げて自分のトラックを上げる。それだけで分離ノイズは相対的に沈む。

あくまで、自分のトラックが主役であり、サンプリング素材は彩りやスパイスとして使う、という意識を持つと良いかもしれません。

まとめ

まとめると、ステム分離という技術を使えば、これまで「きれいに音を抜き出すのが難しいから」と、アイデアを温めるだけで終わっていたようなことも、すぐに形にできるようになります。

もし、自分のアレンジの幅をもっと広げたいとか、既存の曲のフレーズを参考にしながら、新しいアイデアを練ってみたい、なんて考えている方。あるいは、手軽にリミックス制作に挑戦してみたいと思っているトラックメイカーやDTMerの方は、ぜひ一度、ブラウザ上で使える無料のステム分離ツールなんかを試してみてはいかがでしょうか。

この記事で紹介したステム分離は、ブラウザで無料で試せます(登録不要・音源は端末から出ません)。